感染管理と患者さまへお伝えしたいこと
新型コロナウイルス感染症の影響を受けまして、多くの患者さまにご迷惑をお掛けしております。
3週間、急患対応のみとさせて頂き、対策を練っておりました。
治療・重症化予防を中心に徐々にリスタートするにあたり、以下、3点をお伝え致します。
長文です。が、1つ1つの項目をできる限り分かりやすくまとめました。
皆様の知識を整理し、より効果的な対策を行う一助になれば幸いです。
① 患者さまへのお願い
② 当院の感染管理
③ ウイルス感染と歯科の関係で多くの論文から分かっていること <インフルエンザウイルスと歯周病菌の観点から>
① 患者さまへのお願い
新型コロナウイルスのPCR検査は、歯科医院では行っておらず、
当院でも現在は行っておりません。
お付き添いの人数は最少にてお願い致します。
混雑時には院外でお待ちいただくこともございます。
ご了承の程、よろしくお願い申し上げます。
② 当院の感染管理 5つの柱
1本目 密を避ける取り組み
1 診療体制の変更 (診療時間の短縮・予約人数の制限)
2 お付き添い人数の制限
3 混雑時の院外で待機
4 診療室内で次回予約を取り、会計準備が出来てからの退出 (1Fのみ)
2本目 ウイルスを院内にできる限り侵入させない取り組み
1 電話問診
2 お越し頂いた患者様への問診表、検温、手指消毒、ご署名
3 スタッフ・業者さんの検温、手指消毒、日常との違いがあれば自宅待機
4 スタッフへの自粛指導、通勤時の注意点指導
3本目 接触感染への対策
1 できる限り、物を減らす
2 待合室・受付・トイレ・スリッパ・ボールペン等、手を触れる場所の
消毒回数の増加
3 患者様毎の汚染レベルの低い部位からのルビスタでの清拭・噴霧
消毒液を大学病院と同様へ変更
4 雑誌・おもちゃ・布製イスの撤去・荷物置きやイスをプラスチック製へ変更
5 スタッフルーム入出前の手指消毒
6 治療の短時間化のための診療準備・サポートのスピードアップ
4本目 飛沫感染への対策(エアロゾル)
1 飛沫を発生させないための対策
A 空気・水が飛び散りにくい器具・機材の選定と使い方の徹底
B 唾液を溜めない事への注力 バキューム・サブバキュームの随時使用
C 患者様着席後の殺菌消毒液30秒洗口によりお口内の細菌総数を
減らしてからの処置
2 発生した際の対策
A 診療を個室にしてあること
B 電気集塵での医療機関専用空気清浄機を2台設置24時間
(35mm2を1分で完遂 ウイルスへも充分な効果)
C スタッフ⇔患者様の感染防護
目 ゴーグル+フェイスシールド
口・鼻 KN95マスク+サージカルマスク+フェイスシールド
身体 1日2回の診療着の上下着替え・消毒
D 診療時間中のできる限りの換気
E 患者様ごとの治療器具の滅菌(歯を削る器具や、体液に触れるもの、
患者様視点で気になる全て )
ディスポーザブルの実施 (グローブ・歯面研磨ブラシ・吸引管・
トレー・コップ・歯ブラシ等)
F 口腔外バキュームの設置
5本目 今後の感染対策
5月 地域の感染拡大防止策 (近隣の大型医院・スーパー・コンビニ・施設
などへの高品質マスク・消毒液の寄付)
6月 最高基準Class-B滅菌器の増設
8月 3台目の医療用空気清浄機の増設 https://www.tokyogiken.com/ja/mla/
③ 歯科から伝えたいこと
インフルエンザ予防と歯周病菌との関係より考えられること
日本歯科医学会連合 新型コロナウイルス感染症対策チーム
1 口腔健康管理(口腔清掃)はウイルス感染への水際対策です
ウイルスの感染は、鼻と口と目から起こります1)。
インフルエンザウイルスの場合、お口が不潔だと、口に入ってきたウイルス
が感染しやすくなります。
お口に住んでいる細菌が出すタンパク分解酵素はウイルスが粘膜細胞の中に感
染することを促進します2)。
ウイルス感染予防のために、お口の衛生管理を心がけて下さい。特に歯周病菌
は強力なタンパク分解酵素をもっています。
歯周病にかかっている方には、ご自身での口腔清掃と共に、歯科医院における
プロフェッショナルケアも大事です。
2 不潔なお口は腸内細菌のバランスを乱し全身の免疫力を弱めます
ウイルス感染への有効な対策は、体の免疫力を低下させないことです。腸内細
菌のバランスは全身の免疫に密接にかかわっています。
そのため、腸内細菌のバランスが崩れると、感染症にかかりやすくなった
り全身疾患が発症しやすくなることが知られています3)
お口の細菌が食道・胃を通って腸内にたどり着き、腸内細菌のバランスを乱し
て全身疾患発症の原因となることが判ってきました4)。
お口が不潔な方、特に歯周病未治療の方は、食事のたびに多くのお口の細菌が
腸に運ばれ、全身の免疫力が低下するリスクが高まります。
3 お口が不潔だと肺炎のリスクも高まります
中高年になると誤嚥と言って、食べ物や唾液が気道に入ってしまうことがあり
ます。お口が不潔だと、この時にたくさんの細菌が気管に入って肺にまで至
り、誤嚥性肺炎という肺炎を起こしてしまいます。
誤嚥のリスクが高い方は、ウイルス性肺炎のリスクも当然高くなります。
さらに、歯ぐきに住む歯周病菌が血流にのって全身を駆け巡り、体のあちこち
に炎症を起こします5)。
また、歯ぐきの炎症により作られた炎症を起こす物質(炎症性物質)も血流に
のって全身へとばらまかれます。
その結果、体の免疫が乱されてウイルス感染による炎症症状が進みやすくな
ってしまいます。
4 コロナウイルスは口からもやってきます
現在、中国からたくさんの論文が発表されています。
これらの論文は、ウイルス感染が「口腔からも始まる」可能性を示していま
す1, 6)
今後ますます検証が進むと、コロナウイルス感染の予防には口腔衛生管理が重
要であることがはっきりしてくることでしょう。
手洗い・うがいに加えて、お口のセルフケア(丁寧な歯磨き)とプロフェッシ
ョナルケア(歯科医院での専門的クリーニング)を心がけてください。
また、舌を磨くこともウイルス感染予防に効果があります。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
今後も、皆様にとって有意義な情報は発信して参ります。
医療法人社団翔誠会新江古田こばやし歯科クリニック
小林良